・ASDのこだわり行動について知りたい人
・ASDのこだわり行動の支援・対処法を知りたい人
・極端な偏食、特定のものへのこだわり、感覚刺激への欲求といったネガティブなこだわり行動への対処アイデアを知りたい人

はじめに
今回は、ASDの人に見られる「こだわり行動」について、具体的な支援・対処法についてまとめていきます。
こだわり行動は同一性保持への強い欲求がベースにあると考えられますが、時に本人にとってマイナスになるようなネガティブなことがこだわり行動として表れてしまうことがあります。
そういった時にどう対応するべきかを見ていきましょう。
れっつごー。
この記事で紹介するこだわり行動の変化へのアイデアは、あくまで一例です。
こだわり行動が強く生活に大きく支障をきたしている場合は、お医者さんに相談されることをおすすめします。

こだわり行動は自分ではコントロール困難だから難しいよね…
こだわり行動について
こだわり行動とは
おさらいです。詳しくは下の記事から。
こだわり行動は、定型発達の人の「執着」とは違い、同一性保持への強い欲求がベースにあると考えられています。
同一性保持とは … ある特定のモノや状況に対し、その状態を一定・いつも通りに保とうとすること。
こだわり行動は、時に本人の成長や日常生活にマイナスとなるネガティブな行動になることがあります。
しかし、同一性保持への強い欲求がベースにあるため、本人ですらコントロールできないことがほとんどです。
ネガティブなこだわり行動の例
・極端な偏食
例)特定の味のドーナツしか食べられない、水が飲めない(ジュースしか飲めない)
・特定のものへのこだわり
例)特定の服しか着られない、特定の布団がないと寝られない
・感覚刺激への欲求
例)髪の毛を抜いてしまう、頭をぶつける
もちろん程度はありますが、このようなこだわり行動は時に命にも関わるため、対応が必要になることがあります。
こだわり行動への対処の基本の流れ
こだわり行動の対処のポイントは「こだわり行動にこだわりすぎない」「対象を変化させていく」の2つです。
こだわり行動にこだわりすぎない
こだわり行動は、基本的にやめさせる必要はありません。同一性保持への強い欲求から表れると考えられるため、突然強制的に止めさせるのはかえって逆効果であることが多く、大きなストレスからパニックやその他の問題行動の引き金となってしまいます。
また、同一性保持への強い欲求が本人をこだわり行動に動かしている状態であり、本人もコントロールが難しい場合が多く、「やめなさい」という叱責も意味がないどころか混乱を招いてしまうことが多いです。
対象を変化させていく
しかし、本人の成長や日常生活に支障をきたす場合は、こだわり行動を変化させていく必要があります。
まずステップ1として、「こだわり行動をしないと同一性保持の欲求が危険にさらされる」という本人の気持ちを認めることが大切になります。
こだわり行動がない人からすると想像が難しい状態ではありますが、要は「本人はこだわり行動をコントロールできず、こだわり行動をしないと非常に不安になる」ことを認める、ということです。行動としては、無理にやめさせない、ということですね。
これにより、「この人は自分のこだわり行動に関して、危害を加える人間ではない」という信頼関係の構築を目指します。
この関係が、こだわりの対象を変化させていく非常に重要なベースとなります。
ステップ2としては、本人と見通しを共有する、こだわりの対象を変化させる、です。
具体的には、「こだわり行動がしたい」という気持ちを認めながら、見通しを持った安心感を通じ、こだわりのの対象を変化させていきます。
見通しの共有とは、「泥遊びをやめない」という「やめないこだわり」や、「新しいことを始めない」という「やらないこだわり」に対し、「行為をいつ始めていつ終わるのか」「どれくらいすればいいのか」という見通しを提示します。
これだけでも大きな効果があることが多いです。
こだわりの対象の変化とは、「こだわり行動の中の何のシステムにこだわりを持っているか」を探りだし、そのシステムが体感できる他の対象に移行させていきます。
例えば床を叩くことがやめられない場合、「音にこだわりがある」「叩くときの手の感触にこだわりがある」等、様々な状態が考えられます。
音にこだわりがあるのであれば、同じような音がするものを代わりに叩くように導く。
手の感触にこだわりがあるのであれば、同じような感触がするものを代わりに叩くように導く。
こうして、同一性保持への欲求は確保しつつ、行動自体を別のものに変化させていきます。
また、言葉でコミュニケーションがとれる場合は、こだわりの対象を変化させることのメリットや必要性をしっかり伝えておくことも大切になります。
対処のアイデア
こだわり行動の中のどのシステムへのこだわりなのかを常に考える必要がありますが、分からないことも多いです。
そういう時は、方法論から入っても良いと思います。
※下記の方法は、あくまで一例です。
こだわり行動が日常生活に大きく差し障る場合は、お医者さんに相談されることをおすすめします。
偏食
どうしても食べられないものがある時は、まず一緒にその食べ物について調査をしましょう。
野菜であれば、できれば収穫から一緒に行えると良いと思います。手触りや形、色、匂いといった「食材そのもの」を知ることで、食べることへの安全を確認します。
調理も一緒に行いますが、この際に本人に「調理法」「食材の大きさ」「柔らかさ」「火の通り具合」「見た目」「香り」「味付け」等を決めてもらいます。感覚過敏等に配慮し、口に入れたときの見通しをもってもらう感じです。
そして、先程見た食材がどのように調理過程で変化していくかを、実際に近くで見てもらいます。
食材そのものと調理したものが同じものであるということを体感してもらいます。
本人も調理に参加できるとベストですね。
特定のものへのこだわり
身に付けるものの場合、匂いや肌触りといったものへのこだわりであることが多いです。
この場合、まず感覚過敏を考えたいと思います。本人が言語化できればよいのですが、言語化できない場合は好むものに共通する要素を探していきます。
また、化学繊維は乾燥すると帯電しチクチクするため、季節や日によって好みが変わる場合は環境の要素も考えてよいと思います。
匂いは特定のものを他のものに移していければよいですし、肌触りは持ち運べるもので同じ肌触りのものを探すのがよいと思います(特定のぬいぐるみがあればどこへでも行ける!という子がいました)。
感覚刺激への欲求
基本は、同じ感覚刺激が得られる代わりのものを用意する、です。目の感触であればスライムや義眼、髪をぬく感触であれば散髪練習のダミーヘッドでも良いです。
ここで難しいのが、「痛み」の感覚刺激を求めてしまっている場合です。
痛いのにやめられない、本人としても非常に辛いですね。
この場合は、ひとまず同じような痛みが得られる比較的安全な別の方法に変化させていくのがよいと思います。頭をぶつけるのであれば両手を叩く方に、といった具合です。
時に命にも関わりますので、お医者さんと相談しながら進めましょう。
おわりに
今回は、こだわり行動への対処を見ていきました。
こだわり行動は多岐にわたるため、上記のアイデアはほんの一例ですが、基本の流れは大きく変わりません。
こだわり行動自体は、本人がやめたり変化させたりすることが難しいものです。「自らの行動のコントロールが難しい」という点が、社会的にも理解されにくい要素のひとつなのかなと感じます。
どんなことでも同じですが、本人にとっても周りの人にとっても安心できる形で日々が送れるといいなと思います。
それでは、またお逢いしましょう。
こだわり行動を通じて仲良くなることもあるよ!
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